と眺め大な遊興



狐につままれたような気持ちで、東呉は祖父の別宅を後にした。
東京の地下は水道やら、地下鉄やら、ケーブルやら張り巡らされて、広施設があると聞かされても俄かには信じがたい。
自室に戻り、貰った絵馬のような通行証をまじまじてみた。古い字体が薄く読める。

「澄川家専用永世通行証……」

ベッドに身体を投げ出して、大きく息を吐いた。
それから思いついて、パソコンに向かうと思い付く限りの単語を羅列して、検索を始めた。

東呉の人生が変わろうとしている。
*****

数日後、東呉は不安げな顔をしたまま柳川に連れられて、車中の人になった。

「ねぇ、柳川さん。行儀見習いって何するの?まさか、花魁の修行とかじゃないよね?いくらなんでも、やだよ……。」

柳川は意味ありげに微笑んだ。

「ご心配には及びません。東呉さまに花魁の資質があるなら、向こうの方から何か言ってくるはずです。柳川の見た所、東呉さまはこの上なく天真爛漫でいらっしゃいますから、禿がお似合いでしょうね。大旦那さまの時は、行儀見習いが終わった後もこのまま是非にと言われて、お断りするのに大変苦労したのです。」

「なんだよ……。それって、もし何も言われなかったら、じいちゃんに負けてるってこと?」

「どうでしょうか。勝ち負けではないと存じます。東呉さ搬屋公司收費まは、サンフランシスコ条約をご存知ですか?」

「敗戦の?社会の課外で習ったよ。」

「旦那さまは、その場に呼ばれておいでになりました。旦那さまがいらっしゃらなければあの時に日本は4分割されていたかもしれません。」

東呉は思わず吹きだした。

「まさか~。じいちゃんどれだけ、力持ってんだよ。」

「おや、ご存じなかったんですか?一回きりという約束で、大旦那さまは御座敷に行かれたんですよ。大江戸に行かれたら、きっとどなたかがお話してくださるでしょう。楽しみになさってください。」
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