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沉思只羨天隨子

たくさん転じると

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たくさん転じると


狭い庭一面に、たくさんの雪うさぎが跳ねていた。
きらきらと雪の結晶が朝日を弾く。
鮮やかな赤い実を目に使い、小さな耳は、難を言われる南天の葉。
大きなうさぎの横には、寄りそうように小DPM點對點さなうさぎがいた。親子のようにも、兄弟のようにも見える。

「誰かのいたずらかしら。それにしても、ずいぶん作ったことね、可愛らしいこと。」

一衛には、庭一面で跳ねる雪うさぎを誰が作ったか分かっていた。


ふと気づけば、急ぐ一衛の手の甲に包帯が巻かれている。
足もゆっくりと引きずるようにしていた。

「一衛!お待ち。その手はどうしたのだ?」

聞こえないふりをして、一衛は急いで歩を進めようとした。

「待てというのに。」

腕を引っ張ると、一衛は走った苦痛に小さく顔を歪めた。

「……っ!た……っ、大したことはありません。槍術の修練の成果です。」
「見せてごらん。」
「大丈夫……あっ。」

藩校ではすべての武芸の修練の熟達よりも、精神の鍛錬に重点が置かれる。
一衛も他の者と同じように、決して弱音を口にDPM床褥する事は無かった。
振り払おうとした手を掴むと、自分で不器用に巻き付けただけの白布を解き、隠された傷を見た直正は、眉をひそめた。
色を変えてぷくりと腫れた甲と、親指の付け根を隠すためだけに包帯を巻いている。
おそらく引きずる足も同じ状態なのだろう。

「ひどく腫れているではないか。こんな手当てでは駄目だ。帰りにうちにお寄り。手当ての仕方を教えてやろう。」
「平気です。このようなかすり傷、手当ての必要などありません。」
「一衛。いいか?やせ我慢も良いが、手当てを怠ると直りが遅くなる。下手をすると傷めた筋が固まって、指が曲がらなくなったりして刀を握れなくなるかもしれない。そうなると取り返しがつかないよ。」
「……」
「いざ出陣のときに、刀も持てないでお役目を果たせないでどうするね?怪我の治療を恥じてはいけない。いつどんな時も、力を発揮できるようにしておくのも、鍛練の内だ。」
「あい……。」
「わたしは先に帰っているから、帰りに必ずうちに来るんだよ、いいね?」

直正のいつにない厳しい口調に、一衛はやっとこくりと頷いた。


日新館に通い始めて、一衛は以前ほど直正のDPM度身訂造後を追わなくなっていた。
直正の顔を見れば小犬のように一目散に走ってきた一衛も、大人になって来たと言う事なのだろうか。
たまに見かけても、言葉を交わそうともせず、友人たちに交じって遠くから目礼をするだけだった。
直正はわずかに寂しさを感じていた。
父の言うように、一衛もひな鳥の巣立ちを迎えたのかもしれないとも思う。
直正は成長を嬉しく思いながらも、大切な弟が遠くなったような気がして一抹の寂寥感に襲われた。
もしも一衛が、嫁取りの話などをいきなりし始めたら、何と返答すればよいのだろうか。

「それはまだ早いと、たしなめるか……いや、早くはないか。既に許嫁がいるのもおかしくない年だし……大体、一衛は会津小町と言われた叔母上に瓜二つなのだ。城下にも一衛よりも見目良い年頃の娘などいないぞ。むしろ一衛に似合うのは白無垢の方……馬鹿。何を言ってるんだ、わたしは。」

自分の独り言に赤面した直正だった。
まだ11歳になったばかりの一衛が、そのようなことを考えているはずもないのだが、近ごろの直正は、一衛を手放す日が間近に迫っているようで落ち着かなかった。
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