あったと見る浸ころだ
どれくらいあそこにいたんだろう。夕日は山並みに消え、谷底には夕闇が迫っていた。再び吊り橋の洗礼を受けバイクに戻った僕は、喉の渇きを憶えて水を飲もうとして水筒が空なのに気が付いた。しまった、あそこの沢水なら飲めただろうに、すっか香港招聘りリズムを狂わされてしまったぼくはエンジンをかけ、バイクをスタートさせた。
暫く走ると一軒の家が見えた。かなり古そうだが人の気配はする。何気なくスピードを落とすと、庭先に引かれたパイプの先から水がチョロチョロと流したままになっている。山からの引き水なのだろう。すぐにバイクを止め、開けっ放しの玄関に声をかけた。
「すいません、お水もらっていいでしょうか」
「どーぞ」と出てきたのはさっき沢で出会った女性だった。山支度は解いていたがやはり和装だった。
交差点は拡幅され信号機が取り付けられていた。曲がった先の県道も白いラインの引かれた2車線の立派な道路に変身していた。
お!これなら案外楽に峠を越えられるかも僕はほくそ笑んだ。
10年前と同じように、左折してから暫くの間は左右に水田が広がるのどかな田園風景だ。やがて道は急峻な山塊に挟まれ、人間のテリトリーは見る珠海船票路はそれをあざ笑うかのように幅を変えることもなく、白いラインの引かれた2車線のまま谷間を切り裂いていく。僕は妙な予感を抱きながらバイクを進めていった。
道は少しずつ高度を上げ、風も冷たくなった。やがて覚えのある小さな尾根筋を越えるコーナーに入ったところで僕はバイクを止めた。
目の前で道路は谷を渡っている。あの吊り橋の。以前は尾根筋を回り込んでいた道路はそちらへは行かず、橋で対岸に渡るように付け替わっていた。
バイクを降りて欄干から下を覗いてみるがあの吊り橋は見当たらない。そのまま歩いて橋を渡ろうとした僕は驚いて立ち止まった。橋のすぐ上流に巨大なアーチ式のダムがそびえていたのだ。灰色の無機質な壁が谷筋をふさいで迫ってくる。橋の先にはトンネルの入り口があり、トンネル内には照明がこうこうと灯っている。
僕はトンネルに近づいた。
銘板には「山女魚沢トンネル」とあった。 出発ロビーではチェックインを促すアナウンスが繰り返されている。ずっとプレッシャーの中で生きてきた人だったから、体や心が壊れてしまったのね。帰りたくなる家を持っていなかったあたしはたBetter Life 清潔液だ一人の味方も失ってしまったの。この世界に心休まる場所が無い。それはとてもつらい事だっただから、あたしはどうしてもおばあさまに会いたくなって手紙を送ったの」
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